特定技能1号の支援事業の一つとして、「日本語学習の機会の提供」がある。
その内容について、以下説明する。
特定技能1号外国人を雇用する企業は、採用外国人が円滑に日本で働き、暮らしていくために必要な日本語を学習する機会を提供することが求められている。あくまでも企業に求められているのは、日本語学習機会を提供することで、必ずしも自社で教育をする必要はない。
日本語学習支援は必ず行うべき「義務的支援」と行うことが望ましい「任意的支援」とに分かれている。しかし任意的支援であっても特定技能1号外国人支援計画に記載した場合は遂行が義務付けられている。
また、日本で暮らしていく上で必要な日本語は、継続的に学習してこそ習得可能なため、学習機会の提供も継続的になされることが必要。「事前ガイダンス」のように1回やって終わりというわけではなく、特定技能1号外国人を雇用している間ずっと定期的に行う必要がある。
◆日本語学習の機会の提供に係る義務的支援
義務的支援では、下記のいずれかの方法で企業が、特定技能1号外国人に日本語学習の機会を提供するべきと定められている。
①日本語教室や日本語教育機関の情報を提供し、必要に応じて入学手続きの補助をする
②日本語教材や日本語講座の情報を提供し、必要に応じて入手手続きの補助をする
③1号特定技能外国人と合意の上で、企業が日本人教師と契約を結び、日本語講習を提供する
ここで注意すべきは、これらの情報提供や手続きの補助に係る費用については、受け入れ企業が負担をしなくてはならないこと(学習費用自体は、1号特定技能外国人負担でも問題ない)。
◆日本語学習の機会の提供に係る任意的支援
任意的支援としては、
・支援責任者や担当者等が日本語教育の企画・運営を積極的に行うこと、
・日本語試験受験の支援や資格取得者への優遇措置を講じること、
・日本語教学習に掛かる費用の全部または一部を企業が負担すること、
が挙げられている。
学習費用を企業が負担することは、あくまでも任意で、義務ではない。しかし、過度な費用負担が雇用外国人にかかると問題視される可能性もあるので、学習費用が高額であった場合、企業が金銭的な支援をすることが望ましい。
◆企業が支援すべきこと
規定では、義務的支援と任意的支援に分かれているので、「情報の提供や手続きの補助といった義務的支援だけ行っておけば良い」と思われるかもしれない。
しかし、規定の有無に関わらず、外国人材への日本語教育は、企業の生産性に直結する重要な問題だ。
特定技能1号外国人は、日本語基準(日本語能力試験N4合格以上)をクリアしているか最低3年間の技能実習を満了している方にはなる。しかし、日常的な場面で使う日本語をある程度理解することはできるかもしれないが、業務上の複雑なやりとりを理解する、中長期間にわたって日本で暮らす、といったことを考えると十分な日本語力とは言えない。
このような外国人材に組織の戦力になってもらうためにも、単なる情報提供にとどまらず、企業が金銭的な支援をする、自社で研修を行うなどの積極的な支援が求められている。
また、支援の全部を登録支援機関に委託しているので、日本語教育も登録支援機関に任せておけば問題ないと思われるかもしれないが、登録支援機関も日本語教育のプロではないケースがほとんど。
これらを考慮すると、支援は外部に全部委託していたとしても、日本語教育に関しては、受け入れ企業が主体的に社員の能力開発の一環として支援することが望ましい。