留学生の採用内定と内定取消し
「採用内定」とは企業が応募者に対して、就労を開始する前に「採用しますよ」という意思表示をすることです。採用内定には、就労開始時期又は効力発生時期が決まっている解約権を留保した労働契約が成立するものと認められています。
つまり、採用内定により労働契約が成立しているということですので、使用者による内定の取り消しという行為は解雇にあたり、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当な理由が必要、という高いハードルがあり、たとえ相当な理由があるとしても、その時期や理由によっては損害賠償責任を問われる可能性もあります。
外国人留学生の内定取消し
外国人留学生の雇用においては、内定を得ても内定取消しとなることが珍しくありません。上記のように内定の取り消しはなかなか高いハードルが存在すると言いながら、日常的に内定取り消しが行われるのには理由があります。
その理由とは外国人の在留資格(ビザ)取得の経緯にあります。
就労ビザを新規で取得する場合や在留資格(ビザ)の内容を変更する場合、まず外国人は企業から内定を得る必要があります。在留資格(ビザ)を取得してから内定ではなく、まず内定してから企業の雇用契約書(雇用条件通知書)を添付して出入国在留管理局へ在留資格(ビザ)申請します。
そのため、在留資格(ビザ)が取得できなかったり、在留資格(ビザ)の変更ができなかった場合には、そもそもその企業で働くことができませんので内定は取り消されることとなります。
試用期間と本採用許否
使用者は、労働者の就労開始から一定の期間を「試用期間」とする場合があります。
試用期間は、採用した労働者の雇用を継続することが適当かどうか判断する期間とされ、解約しますよという権利が使用者に留保されている労働契約の成立というものを認めている判例などがあるものの、試用期間中の解雇や試用期間満了時の本採用拒否が無制限に認められるという訳ではありません。
やはり試用期間の趣旨や目的に照らして、客観的に見ても納得のいく合理的な理由と社会通念上相当だという理由が必要とお考え下さい。
また、試用期間中でも加入要件を満たす場合には、使用者は労働者を雇用保険、社会保険等に加入させなくてはならず、これは外国人労働者であっても同様です。